『まほろばのあかり』芸術灯籠展 に伺いました。
英国王立美術協会名誉会員丹羽名甫様の作品が展示されているからです。

丹羽名甫先生


私は学生時代、東大寺森本長老の奥様、ハル子先生にお花を習っておりました。
お座布団には前後があること。
畳の上に手をついてのお礼の仕方。
畳の目に沿っての掃き掃除。
お月謝は新札。
当たり前のことを親からろくな躾を受けてこなかった私に
大人になってから躾けて下さったのはハル子先生だったと思います。
お寺の奥様というのはどこも大変なお人付き合いがあるかと思います。
東大寺の修二会お水取りの期間中、ほぼ一ヶ月の間連日連夜の来客。
塔頭から二月堂まで歩いてお松明や局での声明のご案内。
一日二組、時間差で案内されてる日もありました。
お腹が空かれた頃合いに、お迎えにあがり、
塔頭に戻って、おうどんなどを出されて、
暖をとり、また二月堂へご案内されるのです。
大忙し。
奥様もまるで練行衆と同じく二月堂に籠って修行のよう。
私たち弟子にも同じようにお水取りをご案内して下さったことは忘れられません。
ハル子先生に
「まほろばのあかり展に、神戸でよくしてくださった丹羽先生が灯籠を奉納される」と連絡をしました。

ハル子先生は、
「この頃少し体調すぐれない日もあって、休んでる時もあるの。
一緒に二月堂には上がれないけれど、帰りに、寄りなさい。
個展の案内もくれてるのに返事もしてなくてごめんなさい」
でした。
先生に気を遣わせてしまった。
誰に対しても、お付き合いを大切にされてた方には、連絡すること、案内を出すことが
負担になる事もあると、この頃思うことが増えました。
あれから30年が経って、私も私の親も先生もみんな歳を重ねました。
二月堂へ向かう時、あの日のこと、また別のあの日のこと。
思い出しながら参道をあがります。
今日は、丹羽先生の灯籠の遠くに向こうに鴟尾が輝いていました。
また一つ、二月堂の思い出が増えました。

真っ直ぐ帰りました。
寄れば先生の用事が増えるだけ。
